NEWS : ユネスコ・イコモスの日越準備国際会議

- 本会主催 -

 第5回日越伝統木造建築国際交流会議

- 日越独仏韓5カ国による国際会議 -


 会議場全景

世界遺産に登録されているベトナム中部の古都フエに点在する伝統木造建築群についてベトナム政府系機関からの要請を受けて修復・保存に技術面で協力している本会が、2016年9月16日に現地で5回目となる「日越伝統木造建築交流会議」を開いた。今回は、日本とベトナム以外にドイツ、フランス、韓国からも専門家が招かれ、保存活動の重要性について各国からの論文発表や討論が行われ、参加人数は過去最多となる約100人に上った。

フエは19~20世紀に存在したベトナム最後の王朝、グエン(阮)朝の首都として栄えたトゥアティエン・フエ省の省都で、市内の中央を流れるフォーン川北岸の旧市街地に点在する旧王宮などの100以上の建物で構成する木造建築群が、「フエの建造物群」として1993年にベトナム初の世界遺産に登録された。


 ファン・タン・ハイ フエ遺跡保存センター所長

フエの木造建築群を構成する建物の大半は、日本と同様に高温多湿の気候によって木材の劣化が激しく、シロアリによる腐食も目立ち、インドシナ戦争やベトナム戦争によって壊滅的な被害や大きな損傷を受けた建物も少なくない。木造建築群を管理するベトナム政府系機関の「フエ遺跡保存センター」(ファン・タン・ハイ所長)は、ベトナムの歴史の象徴ともいえるフエの木造建築群を後世に継承する修復・保存を一大プロジェクトに位置付けている。修復作業は現在までに2~3割程度の進捗にとどまっているが、今後おおむね50年間でほぼ完了させる計画としている。フエ遺跡保存センターの関係者は「そのためには、同じアジアで木造建築の歴史と伝統を持つ日本からの更なる技術協力が不可欠だ」と強調する。


 中村光彦専務理事

2012年にフエ遺跡保存センターからの要請を受けて本会がフエ遺跡保存センターと共同で発足させた日越伝統木造建築交流会議は、今年9月に現地で開いた5回目の会議には、本会から海老原忠夫副会長、中村光彦専務理事、今井正敏、一糸左近の両理事及び加藤博之企画業務課長が参加した。今回は初の試みとして参加国を日本とベトナム以外にも拡大し、宮殿内部を彩る家具や調度品など木造建築以外の分野も含めた専門家がドイツ、フランス、韓国から招かれ、5カ国の専門家による木造建築群の修復・復元で重視すべきポイントなどについて論文発表や討論が行われた。

本会からは中村光彦専務理事が鳥取県倉吉市の伝統建造物群の再生と、伝統建造物群と調和した市全体のまち並み形成について概要を紹介した。この中で、フエの建築群の保存のヒントにもなる可能性がある制度として、日本の「伝統的建造物群保存地区制度」について解説した。


 今井正敏理事

同制度は、歴史的な建造物の保存・再生を建造物単体ではなく「面」として捉え、周辺を含めた一帯では歴史的景観に悪影響を与えるような新築やストックの外観変更に関する規制を強化し、その代わりに、景観に調和した建物や外観変更には国が財政・税制面等で優遇するという仕組みである。中村専務理事が同制度を紹介した背景には、木造建築群の保存・修復を観光の活性化策としても捉えるフエ遺跡保存センターの意向がある。現在も世界遺産見学を目的に各国からフエを訪れる観光客は多いが、これからも木造建築群の保存・修復が進展していけば、観光客はさらに増えると考えられている。フエ遺跡保存センターは、このような考え方を着実に具体化するため、木造建築群と調和した周辺地区の新築・改修規制も進める必要があるとの問題意識を持っている。


 修復後の城郭内のトリエウ・ミエウ寺院

また、今井正敏理事は、フエの貴族住宅の一つである延福長公主祠の修復の技術指導を行ってきたが、その過程から考察された意匠と構造の特徴について日本の伝統木造建築と比較検討した結果を発表した。

今回の会議後にフエ遺跡保存センターからは、新たな組織として「アジア伝統木造建築保存センター」を創設し、日本やベトナムと同様に伝統木造建築群が多く、様々な保存問題を抱えるラオスやミャンマー等も加えて解決を図っていく構想が伝えられ、全日本建築士会としても今後、前向きに検討して行くこととしている。

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